財産評価基本通達6項(総則6項)について
令和4年4月19日に「路線価に基づく相続財産の評価は不適切である」という判決が最高裁判所第三小法廷で下されました。
本件は、納税者が相続財産の価額を、財産評価基本通達の定める方法によって評価した額(通達評価額3億3370万円)により相続税の申告をしたところ、国税当局がこれを否認し、鑑定による評価額(鑑定評価額12億7300万円)をもって評価すべきとして更正処分をしたため、納税者がこの更正処分の取り消しを求めた裁判です。
今回、税務署が不動産の評価額を見直すために用いた財産評価基本通達6項(総則6項)には「この通達の定めによって評価することが著しく不適当と認められる財産の評価は、国税庁長官の指示を受けて評価する」と記載されています。この総則6項は、財産評価基本通達の定めに縛られずに、評価を一転させる効果があるため、「伝家の宝刀」と呼ばれています。
今回の判決において総則6項が適用されたポイントとしては以下のことが考えられます。
①被相続人が不動産を取得したのは、相続開始の3、4年前であり、節税目的の取引とみなされたこと。
②相続開始から9か月後に被相続人が購入した不動産を売却したこと。
③銀行から融資を受ける際の貸出稟議書に相続対策と記載されていたこと。
④取得価格や不動産鑑定評価額に対し、路線価価額は約4倍の差額があったこと。
以上4点から、行き過ぎた節税対策とみなされたと思われます。
本件を受けて、今後の相続対策としては、なるべく早いうちに取り掛かることがベストです。また、不動産を購入する際には節税対策ではなく、賃貸目的など、節税以外の合理的な目的を明確にしましょう。さらには、相続した不動産は早期売却せずに、相続税の時効の5年を経過するまで売却しないことをおすすめします。
今回の判決は、今後の相続税申告において大きな影響を与えるということで、各業界から注目を浴びておりました。現在相続対策を検討されている方は、できるだけ早めの対策をしましょう。
川庄公認会計士事務所
嶋村
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