11月も後半、紅葉も進み、日に日に寒くなってきましたね。皆様どうお過ごしでしょうか。
今回は、私の査察勤務第4号事件のお話をしたいと思います。
皆様は、「鉱害屋」と言う言葉を聞いたことがありますか。
福岡県は、主に「福岡」「北九州」「筑豊」「筑後」地区のブロックに別れますよね。
特に、「北九州」「筑豊」地区は、怖いとか危ないと言うような負のイメージがあるようですが、… 私自身は、「北九州」地区出身ですので、そんなことはないのにと … 残念ですが …
「鉱害屋」は、当時、なかでも、この「筑豊」地区において、特に多用された言葉でした。
皆様もご存じのとおり、「筑豊」地区は、過去に私たちの生活と産業を支えた「石炭」産業の中心地でありましたが、エネルギーが「石油」や「ガス」に変換される中で、斜陽化し、栄枯盛衰の如く炭鉱も閉山され、「鉱害」と言う、負の財産を「筑豊」地区に残していったのでした。
名前は、あえて出しませんが、かっての大手財閥企業も、炭鉱が閉山されたからと言って、完全徹底もできず、その企業の「筑豊」の一部門において、その負の財産の後処理を行っていたのでした。
その負の財産の後処理、つまり、「鉱害」の復旧工事(地盤沈下等の地上等)において、色々な名目で、お金が動かされていたというのが、今となっては実情であったと思われます。
私の4号事件の前年にも他の「鉱害屋」がらみの件で、査察調査が何件か行われていた用でした。
私は、直接携わっていなかったので、他の事件の内容は承知してないのですが、地方議員をされていたような方が、「鉱害復旧」の名目の下に、企業に金を出させたり、たかりを行い、私腹を肥やして脱税したというような内容でした。
私の4号事件も、そのような流れなのかなと思い着手したのですが、実態は、かなり違ったものでした。
その事件は、「会長」と称される地元の実力者が、一代で建設会社を築きあげ、引退後その会社を「長男」「次男」に引き継がせていたのですが、地元の実力者ゆえに、過去からその有名企業ともつきあいがあり、企業からは(鉱害復旧工事や鉱害の不満や苦情等の)地元のとりまとめをしていただくために「協力金」や「地元対策費」の名目で「会長」個人や会長の会社に支出していたと言うのが実情だったようです。
法人である建設会社は、本来の業務である建設工事等や鉱害復旧工事であれば、問題ないのでしょうが、「会長」に対する「協力金」や「地元対策費」などまで入ってきたら処理に困りますよね。なお、この処理方法が「脱税」の原因となっていたのでした。
その「協力金等」の処理は主に「長男」がしていたのですが、個人に関わるものや会社のものまでがごっちゃになり、その実情を承知していない「次男」が、「長男」によって「会社」や「会長」のお金が、勝手に「長男」のものにされていると勘違いし、仲たがいのような形となり、会社は、「次男」により引継がれ、「長男」は、会社から追い出される形となってしまっていたのです。
私が組んでいた主査と「会長」との調査の過程で、誰かが、「脱税事件」の責任をとらないといけないと話になった際、「会長」は、「全部、自分が責任をとる」と一言、静かに申し出たのが今でも印象に残っています。
「長男」「次男」に任せた会社の脱税行為を指示したのは「会長」である自分だし、自分や会社に対して支払われた「協力金」「地元対策費」も私の責任にしてもらって構わない。
ちなみに「協力金」「地元対策費」は、全てが「会長」の懐に入ったと言う訳ではなく、地域のとりまとめ役として、地元の対象者達に分配されていたのですが、「会長」からは、企業からの「迷惑料」や「謝罪一時金」等の名目で現金で渡されており、「領収書」等を残すような性格のものでなかったのです。
自分が話せば、「支払先に迷惑がかかるので、自分の責任でよい。」とのことでした。
私はこの事件に着手するまで「鉱害屋」と言う言葉の負のイメージにとらわれていましたが、逆の意味で考えれば、企業側が、やりたがらないようなもの(鉱害に対する苦情処理、復旧工事の配分、後処理)を、地元のとりまとめ役として逆にうまく利用していたのではないかと思われますね。
固定観念にとらわれてはいけないと言うことですね。
なお、本日は、ここまでとさせていただきます。
川庄会計グループ 川庄公認会計士事務所 戸島

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