節税対策 - 2025-04-16

賃上げ促進税制の繰越税額控除制度

措法第42条の1253項、中小企業向け賃上げ促進税制。この税制は過去に、先輩方がブログで、しばしば取り上げてきたトピックスではありますが、近年、政府が賃上げに力を入れている影響を受けて、この税額控除制度の拡充が行われることとなりました。その中でも特筆すべき点として、赤字などで税額控除できないような場合でも、要件を満たせば、控除しきれなかった税額控除額の5年間の繰越しが認められるようになりました。今回は、制度の概要をおさらいしつつ、繰越税額控除制度の要件をみていこうと思います。

 

まず、概要ですが、中小企業向け賃上げ促進税制は、令和641日~令和9331日までの間に開始する事業年度(個人事業主については、令和7年~令和9年の各年が対象)において、中小企業等又は青色申告書を提出する常時使用する従業員数が1,000人以下の個人事業主が、前年度より給与等支給額を増加させた場合に、その増加額の一部を法人税(個人事業主は所得税)から税額控除できる制度です。求められる要件・上乗せ要件は以下の通りです。

 

必須要件:雇用者給与等支給額が前年度と比べて、1.5%以上増加していること

➡控除対象雇用者給与等支給増加額の15%を税額控除

上乗せ要件➀:雇用者給与等支給額が前年度と比べて、2.5%以上増加していること

➡さらに税額控除率が15UP

上乗せ要件②:教育訓練費の対前年比の増加割合が5%以上、かつ

教育訓練費≧雇用者給与等支給額の0.05%の場合

 ➡さらに税額控除率が10UP

上乗せ要件③:適用事業年度中において「くるみん認定」、「くるみんプラス認定」もしくは「えるぼし認定の2段階目以上」を取得、または

適用事業年度終了時において「プラチナくるみん認定」、「プラチナくるみんプラス認定」もしくは「プラチナえるぼし認定」を取得

 ➡さらに税額控除率が5UP

※税額控除率は最大45%。ただし、控除上限金額は適用事業年度の法人税額の20%。

(用語の詳細については、中小企業庁のHP・賃上げ促進税制ガイドブック等を参照)

 

 そして、冒頭で述べたように、要件を満たせば、上記の内容で計算された税額控除限度額のうち、「控除をしてもなお控除しきれない金額(繰越税額控除限度超過額)」の5年間の繰越しが認められます。その要件は以下の通りです。

 

適用要件:繰越税額控除制度の適用を受けようとする事業年度において、雇用者給与等支給額が比較雇用者給与等支給額を超えること。

 

手続要件➀:繰越税額控除限度超過額が発生した事業年度以後の各事業年度の確定申告書に「繰越税額控除限度超過額の明細書」の添付があること

手続要件②:繰越控除をする事業年度の確定申告書等に「控除の対象となる繰越税額控除限度超過額、控除を受ける金額及び該当金額の計算に関する明細を記載した書類」の添付があること。

具体的な添付書類には次のようなものがあります。

事業年度

明細書の種類

繰越税額控除限度超過額が発生した

事業年度

・別表六(二十四)

・別表六(二十四)付表一

繰越事業年度

・別表六(二十四)付表一

繰越控除する事業年度

・別表六(二十四)

・別表六(二十四)付表一

 

今回はかなり専門用語が多くなってしまいましたが、結論としては、繰越税額控除制度の適用により、赤字でも賃上げ促進税制の恩恵を受ける余地があり、一考の価値があるということをお伝えしたかった次第です。何かの一助になれば幸いです。

 

 

川庄公認会計士事務所 川上


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