Posted by | 川庄 康夫 Yasuo Kawasho |
1. 国税局に超富裕層プロジェクトチーム(PT)発足
平成26年7月10日、富裕層PTが東京・大阪・名古屋国税局に新設されました。
一般的に住居などを除く投資可能な資産を1億円以上有する世帯が富裕層、そのうち30億円以上の投資可能な資産を有する世帯が超富裕層と位置づけられます。
国政庁は今年の調査の重点項目として、①海外取引・海外資産②富裕層③無申告④消費税を挙げていますが、消費税以外はプロジェクトチーム(PT)での対応となっています。
「国境を越えて経済活動を行う者に対する適切な課税を確保するように」との方針を受けて、100万円超の国外への送金を行う場合に、金融機関が税務署への提出が義務付けられた「国外送金等調書」は、平成24年度は564万枚が提出されました。
平成26年12月31日において、5千万円を超える国外財産を所有する人に提出が義務付けられた「国外財産調書」(12月31日現在で海外資産5000万円超を有する居住者で、その財産の種類・数量・価額等を記載したもの)は、翌年3月15日迄に報告提出することになりました。25年分の提出は全国で5,539件であり、福岡国税局分は僅少でした。提出の件数は思ったより少ないな、と感じました。
国は、相続税の申告の際に国外資産が漏れないようにするためにこれらの制度を創設したのでしょうから、今後徐々に整備されていくと考えるのが順当です。
また、この「国外財産調書」に加えて、27年1月1日から「国外証券移管等調書」制度もスタートします。
この「国外証券移管等調書」制度は、金融機関が国外証券を移管するごとに、その顧客の氏名、住所、国外証券移管等をした有価証券の種類、銘柄等を所轄税務署へ報告提出するものです。
これら3つの「調書制度」により国外財産の把握の強化を計ります。
経済協力開発機構(OECD)は、富裕層の資産隠しや課税逃れを防ぐため、各国の金融機関に対し、海外居住者が持つ預金口座の名義人氏名・住所・残高・証券口座等の情報を、税務当局へ毎年1回オンラインで報告することを義務付けました。(2016年導入予定)
このように国内外から資産の明瞭化が計られています。福岡国税局には超富裕層PTは設けられませんでしたが、その役割を所得税の特別国税調査官が担うことになっています。
2. 海外絡みの税務調査例
最近、「法人経営者の所に税務調査に伺いたい」と連絡が入るようになりました。連絡は税務署の所得税担当の「特別国税調査官」ですから、法人税担当の誤りではないのか、事務所の電話受付の女性の聞き間違いではないのかと確認すると、「法人税の調査ではなく、代表者個人の調査です」と言われます。
まあ、一回の調査で法人税の調査と個人所得税の調査を一緒に行えば、合理的かつ効率的に調査が済むなと思い確認しますと、「いえ、代表者個人の調査です」とあくまでも「個人」の調査である旨を主張されます。
川 庄 「何かあったのですか?
税務署 「海外取引がありますので、それの確認です。」
川 庄 「ではすぐ済みますね。半日程度の予定でいいですか?」
税務署 「はい。それで予定を立てて下さい。」
後日2人の国税調査官(調査官より上の位の人です。いつも2人1組で調査を行います)が訪問、調査が実施されました。
川 庄 「なぜ海外取引があるとわかったのですか?何か特別な調査方法など
があるのですか?」
税務署 「いいえ。**さんが国外に100万円超の送金をされています。支払調
書が発行されているのでその確認です。」
「海外の金融機関へ預金等があれば利子所得として毎年申告をしなけ
ればなりません。投資有価証券や株式の売却があれば譲渡所得の申
告も必要です。内容によっては国内の株式投資と損益通算等も可能
です。海外への送金、又は振込があれば、その確認をこのようにして
行いますが、それ以外では把握は難しいですよ」
と言われていました。海外資産の100%近い補足は、今後の課題でしょう。
そのため各調書の整備が急がれていると思われます。
川庄会計グループ 代表 公認会計士 川庄 康夫
Posted by Yasuo Kawasho
代表取締役 川庄 康夫
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